快適なトレッキングを目指して
T事前準備
1.基礎体力
今回のトレッキングに際し必要な基礎体力のトレーニングについて考えてみます。
まずコースはどの程度のものか。
行程表を見ると標高2845mのGhatから4754mのGokyoまで、高所順化の滞在日を除き6日かけて登ります。標高差1909m、距離は34キロ程度です。
1日平均標高差で318m、距離6キロ弱です。これは日本の低山歩きなら、ほんとになんでもない行程です。
個別の日を見ると、歩き始めて2日目に2835mのMonjoから3441mのNamcheBazaarまで登ります。標高差606m、距離は6キロ程度か。ここが最初の難関でしょう。富士山の7合目から8合5勺まで登るようなものです。 低山なら2時間程度の行程でしょうが標高が少し高い。
後は最終日のGokyopeak登頂まで厳しい日はありません。
最後の登頂日は4750mのGokyo lakeから5483m のpeakまで標高差733mを往復します。これも低山なら大したことはないのですが、なにせ標高が5000mです。トレッキングinヒマラヤのグループは3時間40分かけて登っています。低山の2倍位の時間ですね。
全体に基礎体力の問題より高所順化不足が最大の課題となりそうですが、逆に基礎体力が高所順化不足をカバーしてくれる場合もあるかもしれないので、最低限度の山歩きの体力は必要でしょう。
Kさんに送って頂いた「登山の運動生理学百科」によれば登山の基礎体力をつけるには登山にまさるものは無いようです。短時間のジョギングも勿論効果はあるでしょうが登山にはかなわないようです。このトレッキングを低山で行なった場合を想定して訓練すればよいそうです。時間が許せばできるだけ低山登山をしましょう。
次に筋力トレーニングとしては大腿四頭筋(太ももから膝にかけての筋)を鍛えるトレーニングが良いそうです。代表的なものはスクワットですが、添付ファイルを見てください。
2.高所順化
これはもう高所へ行くしか方法は無いそうです。低酸素室は別として。
私は富士山は登ったことが無いので最高地点が3190mの北岳と奥穂高岳です。なので自主トレーニングで出発までに登ってみようと思っています。
ただし、毎月1回日帰り登山をするのでは高所順化するまでに2〜3年掛かるそうです。効果的なのは出発前2ヶ月に毎週行くというものらしいです。それも出来るだけ頂上滞在時間を長くすると良いらしいので、山頂付近に泊まって「お鉢巡り」なんかしてみようと思っています。勿論毎週は行けませんが。
3.腹式呼吸
これは有効だと思います。我々の身体は口から気道を通って肺に繋がっていますが、普通の呼吸では気道部分の空気と肺の中の15%の空気を入れ替えるだけです。気道内の空気をいくら入れ替えても血液に酸素は供給されません。その点腹式呼吸(深呼吸)をすると三分の一の空気を入れ替えることができる。
私の趣味のダイビングでは、タンクの中の限られた量の空気で1時間以上潜ることが必要です。このために要求されるのが深い呼吸です。
浅い呼吸で充分血液に酸素を供給するには呼吸回数に頼るしかなく、気道内の空気をムダに入れ替える回数が多くなり、結果的に大量の空気が必要です。肺の中の空気をゆっくり長く吐ききってから深く腹いっぱい吸い込み、またゆっくり長く吐く呼吸が良いと言われています。
初心者は空気を長持ちさせるため、呼吸回数を減らして苦しくなるまで我慢する人も居ますが、酸欠になって頭痛を起こします。高山病と似た症状ですね。
またダイビングの場合、マウスピースから空気を吸うので、自然と口すぼめ呼吸になるかもしれません。
腹式呼吸が自然にできる人は居ないと思うので訓練が必要です。
訓練の方法が特にあるわけではありませんが、真向法を取り入れながら訓練すると良いとも書いてありました。
ただ睡眠中まで腹式呼吸をするのは困難ですね。血液中の鉄分を豊富にして、酸素を取り入れ易い体質にするのも効果があるらしいですね。
4.睡眠時無呼吸症候群
この場合は当然睡眠時の酸素摂取量が減るので高山病にかかり易い。
肥満体質や鼾をかく人は一度診断してもらう方が良いかもしれない。
「睡眠時無呼吸症候群」で検索すれば、さまざまなサイトがあります。
5.トレーニングの重点
本格的な高所登山では基礎体力の養成と高所順化は車の両輪ですが、トレッキング程度の場合は高所順化に3分の2以上の重点を置くほうが良いのではないか。
事前準備のまとめ
@ 少なくとも週に1回以上は標高差700〜800m程度の山を歩く。
A なお筋力に不安のある場合はスクワット等を1日3セット(1セットは20〜3 0回)程度行なう。
B 腹式呼吸の練習を意識して行なう。登山中、家では真向法など取り入れて。
C 8月と9月には4回以上富士山のお鉢巡りをする。
U 現地における高山病予防
1.歩き方休み方
イ、酸素の量に応じて速度を落とす。
3000mでは3分の2、5000mでは2分の1の速さで歩く。
高所順化が不十分な人はもっとゆっくり。
ロ、無理をしない
息が切れて苦しいときは立ち止まって深呼吸をすること。
辛抱して歩きつづけると翌日などに高山病になる。
若くて体力のある人ほど無理をしやすいので注意が必要。
ハ、1分間の歩数は平坦路で50歩前後、登りは40歩前後で歩く。
この場合の心拍数は60歳台なら110〜120位であること。
ニ、ソローリー・ソローリー、slowly・slowly、ビスターリー・ビスタ ーリーを心がける。
2.テントでの過ごし方
イ、腹式呼吸の時間を作る。
毎朝食事前、寝る前とか時間を決めて毎回10分程腹式呼吸の時間を作り、体内 の隅々に酸素を供給する。
ロ、よく喋る
一人で本など読まず、歌を歌ったり、おしゃべりをしたりして、無意識に腹式呼 吸をする状態を作る。
ハ、寝ころがらない
疲れていてもすぐ横にならず、椅子に座る、できれば付近を散歩するなどしてS pO2(酸素飽和度)を上げるよう務める。
3.水分補給
1日に1.5L以上の尿が出るよう補給する。
飲み物を2.5〜3L以上を飲む必要がある。
ともかくたくさん飲物を飲み、何回も小便をすることが重要。
4.食事
5000m台までの登山ではバランスのとれた食事で充分である。
しかし一応、高山病予防に良いとされる食べ物を挙げてみる。
イ、高炭水化物食品
同じエネルギーを出すのに脂肪より酸素を消費しない。
SpO2も上がる。
純炭水化物食品を食べると高度を300〜600m下げたのと同じ効果がある。
甘栗、桜餅、ジャム、赤飯、さつまいも、味噌、ホットケーキなど
砂糖、あめ、干し葡萄なども良い、飲み物ではココアが一番
魚肉・海藻類には少ない。じゃがいもは意外と少ない。
ダイエット食品は駄目ということですね。チョコレートも良くない。
ロ、血液粘度を下げる食品
ニンニク、黒豆、梅干、魚、酢、ビール、ワイン。
ハ、ビタミン(E、C、ベータカロチン)、鉄、カルシュウム
これらは食品からでは無理なので錠剤等で補給すること。
5、高山病予防薬
イ、ダイアモックス
元々、白内障の治療薬であるが、服用によりSpO2を上げる効果や利尿効果も あり高山病の予防薬として定着している。医者の処方箋が必要らしい。
ただ降圧作用もあるため降圧剤を飲んでいる人は血圧の下がりすぎに注意。
三和製薬がメーカーで1錠250gで4分割できる。
予防的使用には高所到達日の前日から朝晩半錠ずつ、4日間飲む。
治療的には倍の1錠ずつを症状が治まって後1〜2日間まで飲む。
保険薬価は1錠30.6円となっていたが?
ロ、食べる酸素
ゴールド興産の「食べる酸素」が有名で、ネットでたくさん売っています。
95錠で800円〜1200円位まで。
1日10〜20錠飲むように書いてあります。
効果は解りませんが、ダメモトで持って行きましょうか。
ヘルシーグッドという通販サイトで1壜785円、3個で2250円が最安かも。
ハ、飲む酸素
健康ウオーカーの「AquaO2」が良いみたいです(笑)。
60mlで5800円、1ヶ月使えるそうです。
1日3回コップ一杯の水に5滴加えて飲みます。
これもダメモトです。
ニ、酸素吸入
寝る前に吸っておくと効果あるとか。
オーツフォレストの酸素発生器が安いようです。
ボンベでないため飛行機持込もok.
初回10回分 7560円、追加薬剤のみ 30回分 6300円です。
共同装備として持参しても良いかも。
現地での高山病予防まとめ
@ 水をたくさん飲んで二分の一の速度でゆっくり歩く。
A 息がきれたら必ず立ち止まって深呼吸する。
B 休憩時は砂糖をたっぷり入れたココアを飲む。
C おやつはアメか干しぶどう。
D テント場では軽い散歩。
E 炭水化物主体の食事。
F 朝晩10分の腹式呼吸タイム。
G ダイアモックスを朝晩2分の1、4日間。